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「先生は隣。悪ガキは広場。」

京都・千本通にあった北京亭の前身、喫茶店「喫茶広場」の話を聞いた時、全部わかった気がした。バリアフリーでも何でもない。でも、視覚障害のある按摩師がひとりでふらっと入れて、学生がサボりに来て、三世代が通い続けた。目の前の人にただ喜んでもらいたい、その気持ちだけが積み重なった場所だった。

私たちが受け継ごうとしているのは、その空気だ。


「価値ある取り組みや支援というなら、言語化しなければならない」

今から20年前。私がまだ福祉の世界に飛び込んだばかりの新人の頃、ずっと頭にこびりついて離れない言葉がある。

当時、職場の先輩たちと一緒に参加した、とある長い研修でのこと。若かった私は、正直うとうとと舟を漕ぐ時間もあったのだが、西宮にある「青葉園」の清水明彦さんの講義だけは違った。重い障害のある人たちの地域生活を切り拓いてきたレジェンドの語る現場のリアルと哲学が、めちゃくちゃおもろくて、すっかり聞き入ってしまったのだ。

その清水さんが放ったのが、冒頭の言葉だった。

その「本当の意味」と「恐ろしさ」を、私はこの1ヶ月間のクラウドファンディングを駆け抜ける中で、骨の髄まで理解することになった。


1ヶ月でnote30本、プレスリリース4本

現在、私がサービス管理責任者を務める「就労継続支援B型 ぽっぽ」では、後継者不足で閉店した地元の町中華「北京亭」の暖簾を引き継ぎ、障害のあるメンバーたちと共に復活させる「逆転のれん街」プロジェクトに挑戦している。

昨日、その立ち上げ資金を募るクラウドファンディングが最終日を迎えた。結果は、目標を大きく上回る「158万円」。92名もの方々から、熱い想いとご支援を託していただいた。

この期間中、私は言葉を紡ぎ続けた。毎日更新したnoteは30本。社会に向けて打った公式のプレスリリースは、今日配信したものを含めて1ヶ月で4本。全員で4人の小さな福祉事業所としては、異例のペースだと思う。


祭りの後、PV数の低下と「焦り」からの気づき

最初のプレスリリースを出した時、反響は凄まじかった。アクセス数(PV)は跳ね上がり、多くの方が「なんだこの面白い取り組みは!」と注目してくれた。しかし、2本、3本とリリースを重ね、クラファンが終盤に差し掛かるにつれ、当然だが爆発的なPV数は落ち着いていった。

データ画面を見つめながら、正直「飽きられてしまったのか」「話題性がなくなったのか」と不安にもなった。

しかし、立ち止まって気づいたのだ。これは情報が「消費されて終わった」のではなく、「確固たる『デジタル資産』に変わった瞬間」なのだと。


福祉の現場は「ブラックボックス」になりがちだ

福祉業界に20年以上身を置いてきて痛感するのは、現場の支援員たちは日々、本当に尊く、価値のある支援を行っているということ。重い障害のある方や精神障害の方と泥臭く向き合い、小さな成長を共に喜ぶ。しかし、その価値は「施設の中」に留まりがちで、外の世界からはどうしても見えにくい。美徳として内に秘めてしまうことが多い。

だからこそ、20年前のあの言葉が今になって深く突き刺さる。「言語化しなければ、社会には存在しないのと同じ」なのだ。

この1ヶ月で書き溜めた30本のnoteと、4本のプレスリリース。これらは一過性の「ニュース」としての役割を終え、これからは、ぽっぽと北京亭の「最強のデジタル資産(信用)」としてネット上に残り続ける。

「北京亭」に餃子を食べに来てくれる地元のお客様。「ぽっぽで働いてみたい」と検索してくれる当事者の方やご家族。私たちの取り組みを評価してくださる行政やアワードの審査員の方々。

そうした未来の仲間たちが検索した時、「ここは本気で障害者の働きがいと、地域共生を考えているんだな」と、私たちが積み上げた「言葉の地層」が証明してくれる。「可哀想だから助けて」ではなく、「本気で面白いことをやっているから仲間になろう」というメッセージが、24時間365日、誰かに届き続ける。


「言葉」の次は「リアルな価値」へ

クラファンという熱狂のお祭りは終わり、いよいよ私たちは「夢を語るフェーズ」から「日常を運営するフェーズ」へと移行する。

WEB上には、十分すぎるほどの「想い」と「信用」という資産を築くことができた。次はこの強固な土台の上に、メンバーたちが一生懸命に包んだ「最高の餃子」と、お客様の「美味しい!」という笑顔、そして活気ある店舗という「リアルな資産」を乗せていく番だ。

言葉にすることから逃げず、発信し続けたことで得られた158万円と、92名の仲間たち。あの時の清水さんの教えは、20年の時を経て、京都の街で確かに芽吹いている。

夏の「北京亭」オープンに向けて、ぽっぽはさらに加速していく。